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その「不動産の売り方」があなたを破産させる

※不動産を売却される方は必ずお読み下さい。
  • 2020年の民法改正により売主側の責任負担が重くなりました。
  • たとえ中古物件でも「売ったら終わり」「売ったらあとは知らない」は大きなリスクになります。
  • 買主に対する売主側の説明責任や一定の品質が求められる時代です。
  • 売却後のトラブルや損害賠償を防ぐための対応・対策が必要です。
  • その対応策や、より高く安全に取引できる方法を解説します。

2020年の民法改正により、不動産を売り渡す側(売主様)の責任負担が重くなっています。

2020年4月施行の民法の大改正により、事実上消費者(買手側)の保護が強化され、売手側の責任が重くなりました

これから不動産を売却される方におきましては、ご理解して頂きたい内容です。売却後のトラブルを防ぐために、非常に重要な内容ですので、必ず目を通して頂きますようお願い申し上げます。

※一般の方でもなるべく理解しやすいよう、噛み砕いて説明できるよう努めていますが、法律的な解釈が難しい面もございます。ご希望の方は担当より直接説明させて頂きます。

目次

民法改正で不動産売却は複雑化している

不動産広告で売る必須要件

2020年4月に民法が改正されました。これは明治29年(1896年)以来、120年ぶりの大改正と言われています。もちろん不動産売買取引にかかわる法律についても、時代の流れに沿って大きく変わっています。

平たく言えば「消費者が保護され」「売手側の責任が重くなった」と解釈されても過言ではありません。ですから、たとえ中古不動産であっても、一定の責任が問われる時代になっていますので、注意が必要です。

民法改正(前)の不動産売却

民法改正前では法定責任説と呼ばれる「特定物を売り渡せば契約上の責任としては充分である」という解釈がされていました。ですから「売り渡せばそれで終わり」で通っていました(これを法定責任説と言います)。

しかし、それでは買手にとって不利益が生じます。なぜなら、目的物に瑕疵(欠陥)があった場合に責任が追及できないからです。

その中で例外として、売手と買手が知り得ない重大な瑕疵(欠陥)が見つかった場合のみ、損害賠償または契約解除ができていました。

民法改正(後)の不動産売却

しかし民法改正後では「物件を売り渡せば契約上の責任としては充分である」という解釈はなくなりました

売手側は、買手に対して「瑕疵のない目的物(不動産)を引き渡す義務」が発生し、瑕疵がある場合には債務不履行責任となります(これを契約責任説と言います)。

売主・買主が瑕疵の存在を知っているかいないかに関わらず、瑕疵があることによって買手に不利益が生じた場合は「契約の内容が適合しない契約」となります。これを「契約不適合」と呼んでいます。

民法改正前と後の比較

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項目改正(前)民法改正(後)民法
解 釈特定物(不動産)を売り渡せば契約上の責任としては充分である「法定責任説」瑕疵のない目的物(不動産)を引き渡す義務「契約責任説」
責 任隠れた瑕疵がある場合にのみ責任を追求瑕疵が隠れていなくても契約に適合しない場合は責任を追求(契約不適合)
法的責任説・契約責任説の違い

「法定責任説」は、特定物売買の場合には売主は目的物をそのまま引き渡せば債務の履行としては足りるとされている。民法上の瑕疵担保責任は、債務不履行責任とは別に、法が特に定めた責任であると考える見解(改正前の民法)。

「契約責任説」は、売主は、瑕疵のない目的物を引き渡す義務を負っており、目的物に瑕疵がある場合には債務不履行となる。民法上の瑕疵担保責任は、売買における”債務不履行の特則である”と考える見解(改正後の民法)。

参考:BUSINESS LAWYERS by弁護士ドットコム

以下、詳しく説明します。

動画で理解したい方はコチラから

契約不適合とは

契約不適合(契約内容が一致しない場合)とは、買手の購入目的に応じ、その目的物が「種類・数量・品質」に対して適合しない場合を言います。

それら「種類・数量・品質」が契約内容に適合せず、買主の購入目的が達せられない場合は、売主側は一定の責任を負担しなければなりません

種類とは「どのような用途や目的で使用されるか」です。

  • たとえば、居住目的で物件を購入する買手に対して、事務所として引き渡せば契約不適合です。
  • 住宅を建築する目的で土地を購入する買手に対して、建物が建てられない土地を引き渡せば契約不適合です。

数量はその名の通り「数や量」が契約通りかどうか?です。

  • たとえば、契約対象面積が70m2の住宅に対して、実際は65m2しかなければ契約不適合です。
  • 契約対象面積が100m2の土地に対して、実際は90m2しかない場合は契約不適合です。

品質とは「目的物が通常有すべき性質や性能」を満たしているかどうか?です。

  • たとえば、居住目的で売買した住宅に瑕疵(欠陥等)があった場合、住宅の性能として備わっていないので契約不適合です。
  • マンションを建築する目的で売買した土地に瑕疵(地中埋設物や軟弱地盤等)が存在した場合、マンション用地としての性能が備わっていないので契約不適合です。
瑕疵(かし)とは?

瑕疵とは簡単に言えば「通常あるべき品質や性能が欠けているものを指します。たとえば住宅なら「居住する」という目的ために、一般的に備わっている品質や性能が欠けている場合(たとえば雨漏りやシロアリの発生など)が、瑕疵に該当します。詳しくはコチラもご参考下さい。

そもそも性能とは?

性能とは、そのものが持っている能力・役割り。例えば住宅の性能の定義は多種多様ですが、基本的に「安全性・快適さ、健康」などが挙げられます。安全性・快適さ、健康に欠ける住宅は品質に欠け、契約不適合とされる可能性が高くなります。

中古住宅の品質はどうなる?

築年数が経過し、経年劣化が起きている中古住宅(建物)の品質はどうなる?

たとえば築10年が経過している建物である場合「築10年が経過した建物が通常有すべき性能や性質」で判断します。但し、築10年が経過した建物の性能や性質の「基準」や「定義」はありません。ですから客観的判断や判例を参考にしつつ、契約書においてそれらを定義していく必要があります。

売買の目的物(土地・建物)だけでなく、それに付随するもの(設備やブロックなど)も契約不適合の対象になる場合があるので注意が必要です。

その他にも、契約内容や説明と実際が一致しなかった場合も契約不適合になります。

  • たとえば、容積率200%と説明を受けたのに、実際は容積率160%だった。
  • 前面道路幅が6メートルと説明を受けたのに、実際は5.5メートルだった。など

上記で説明したとおり「種類・数量・品質」が、契約内容と一致せず、買主の購入目的が達せられない場合「契約不適合」として、売主側は、以下の責任を負わなければなりません。

契約不適合による買主が売主に請求できる権利
  • 追完請求」・・・代替品引渡・不足分の引渡しの請求ができる。
  • 代金減額請求」・・・不適合の程度に応じて、売買代金の減額を請求できる。但し減額を請求できるのは、売り主が履行の追完を拒否した場合、履行の追完が不能な場合などに限る。
  • 損害賠償請求」・・・買い主に生じた損害の賠償を請求できる。
  • 契約の解除」・・・売買契約を解除することができる。但し、不適合の程度が契約内容や取引上の社会通念に照らして軽微でなく、かつ売り主が履行の追完を拒否した場合や、履行の追完が不能である場合などに限る。

契約不適合責任を問われないために

契約内容に一致せず、売主側の債務不履行責任「修補・代替品引渡・不足分の引渡し・代金減額・損害賠償・契約解除」が問われます。

契約不適合による責任負担を負わないためには、買主側の不利益にならないよう、積極的な情報提供が必要です

「面倒だから不動産会社にすべて任せる」という行為は、確実に売却主のリスクを高めます

信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を、相手方に提供しなかった場合、売手側は不法行為責任による損害賠償請求が行われ、20年間の時効により責任が加重される可能性があります。

とは言え、買主の購入判断に影響を及ぼすものに対して明確な定義・基準はなく、判例による判断や、個人差によることも大きいのも事実です。

程度にもよりますが「コスト(費用や時間)がかかること」「目的の達成や計画が実現しないこと」「健康安全(心身共)に関わること」「権利や法律にかかわること」「感情面にかかわること」については、特に相手の不利益になり得る可能性が高くなります。

よって、後々揉める要因とならないよう、慎重な調査・検査、説明が必要となります。

トラブルになる5大要因
  1. 費用や時間がかかること。
  2. 目的の達成や計画が実現しないこと。
  3. 健康や安全にかかかわること。
  4. 権利や法律にかかわること。
  5. 感情面にかかわること。
トラブル具体的な例
  • 予想以上の地盤改良費用がかかった・・・「コストがかかること」
  • 建物の修繕に対して予想外の費用がかかった・・・「コストがかかること」
  • 建物を建てるまでに多大な期間を要すした・・・「コストがかかること」
  • 建物を建てる目的で購入した土地上に建築ができなかった・・・「目的の達成・計画が実現しないこと」
  • 計画通りの建物が建築できない・・・「目的の達成・計画が実現しないこと」
  • 周辺に嫌悪施設や隣接地の騒音問題による健康や安全的なダメージなど・・・「健康や安全にかかわること」
  • 境界が曖昧だったため、隣接者が想定外の境界線を主張してきた・・・「権利にかかわること」
  • 不動産を売却しようと思ったら違反建築物で売却できなかった・・・「権利にかかわること」
  • 質問や些細な要望に対しいい加減な回答や対応されたため怒りが爆発したケースなど・・・「感情面にかかわること」

それ以外に、買主が特に気にする事柄については、売主からの説明だけでなく、別途、専門調査を買主側で行うよう促したうえで、購入判断をしてもらうことも必要です。

売主が専門業者を依頼してまで調査をおこなうことは義務ではありませんが、事象が明らかな場合は、別途調査依頼を検証する必要があるでしょう。

売主側が積極的な説明努力をしたうえで(説明内容や説明では把握できない部分「たとえば隠れたる瑕疵など」も含む)、買主側に購入の判断を委ね、契約時に買手に承諾を得て取引していくことがトラブルを避けるポイントになります。

つまるところ、

  1. 売主側でできる最大限の情報を調査・提供し、
  2. 買手側で理解、検証、納得をしてもらったうえで、
  3. その価格で購入するかどうかの判断・承諾を得る

このステップが必要です。

情報の調査・提供方法

不動産の売買取引で契約不適合にならないよう、以下の調査手段を使い、情報を取得・整理していく必要があります。

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調査項目主な調査内容調査する人
ヒアリング調査売主様や近隣、購入希望者等からの聞き取り調査宅建業者・売主
法務局調査法務局にて書類調査宅建業者
役所調査役所での書類調査や聞き取り調査宅建業者
現地調査現地での目視・計測調査宅建業者
専門調査専門業者による各調査専門業者

種類の適合性調査

用途と目的の確認
  • どのような目的や用途で売却するか
  • 買手側の購入目的・用途に合った不動産であるか

数量の適合性調査

書類上の面積と実際の面積との整合性
  • 土地:登記簿上の面積と実際の面積の差
  • 建物:増改築による登記簿上の面積と実際の面積の差

登記簿上の面積と実際の面積が一致しないことは多々あります。特に土地については相違していることが多く、登記簿上の面積より実際の面積が小さいと(これを「縄縮み」といいます)、後々トラブルになります。

近年では、最近の判例を鑑みて、登記簿と実際の面積が「5%を超える差異」がある場合は、確定測量をおこない実測取引をおこなうケースが増えています。

品質の適合性調査

瑕疵の有無・可能性の調査
  • 物理的瑕疵
    • 建物:シロアリ・雨漏り・傾きなど(国交省のガイドラインを基本とする)
    • 調査方法:ヒアリング調査・現地調査・専門調査
  • 法的瑕疵
    • 法令違反:主に建築基準法違反の有無
    • 調査方法:現地調査・役所調査等
  • 心理的・環境的瑕疵
    • 臭気、騒音、嫌悪施設の有無
    • 自殺や他殺、火災の履歴等
    • 調査方法:ヒアリング調査・役所調査等
その他の調査
  • 劣化調査等
    • 建物:建物全体の劣化や設備の劣化状況
    • 土地:境界確定の有無・越境物・工作物(ブロックや擁壁などの状態)
    • 調査方法:現地調査等
  • その他
    • 重要事項説明書・契約書の内容の不備等

これらの調査結果を踏まえ、より踏み込んだ専門調査をおこなうべきか?それとも現状のままで売却していくか?を検討し売却計画を立案していきます。

以下の調査は強制でも義務でもありませんが、買手においては「最も知りたい重要な情報」の1つであり、また「購入を判断すべき大きな材料」になります。

  • 建物インスペクション
  • 地盤インスペクション
  • 環境インスペクション
  • 境界確認インスペクション
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インスペクションの種類インスペクションの内容実施者
建物インスペクション建物状況調査・品質性能検査等住宅診断士等
地盤インスペクション地盤調査・土壌汚染調査・地中埋設物調査地盤調査会社等
環境インスペクション大気汚染・騒音・悪臭などの調査環境調査会社等
境界確認インスペクション境界確認に関する調査や境界確定業務土地家屋調査士
その他にも権利関係に関して専門家に調査を依頼するケースがあります。

積極的に調査をすることで「何か不具合が見つかったら売れなくなるのでは?」と思うかもしれません。ですが、買手が最も嫌うのは「見えないリスク」であり、不具合が見つかったからと言って、必ずしも売れなくなるわけではありません(売れない理由は”それ以外の問題であるケースが少なくないのです)。

むしろ何も問題がなければ「付加価値の高い不動産」として、好条件で売却できる可能性が高まります。

たとえば、住宅に対して一定の基準を満たすことで「安心R住宅」としての認定を受けたり「瑕疵担保保険」の加入が可能になったり、住宅ローンの金利の優遇を受けられるなど、付加価値をつけることができます。

アナタの不動産もっと高く売れる

それは宅建業法で定められた重要事項説明だけでは足りません。買主の購入判断に影響を及ぼす情報についても説明が求められます。これらの情報は、宅建業者だけでは調べきれないことも多く、売却主の協力も不可欠です。

  • 売却不動産に係る保有書類の用意
  • 宅建業者からのヒアリングに基づいた不動産情報告知書の作成
  • 専門調査をするか否の判
  • 購入希望者の質問に対する回答等

不動産売却に係る保有書類一覧

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敷地関係建物関係区分所有
地積測量図
境界確認書
地盤調査報告書
土壌汚染等の地質調査記録
地中地下埋設物調査記録
筆界特定通知書
私道同意書
隣接地との境界に関する念書
差押え予告通知書
土地建物の行政指導・処分等の通知書
第三者の設備使用等に関する合意書
など
建築確認通知書(新築・増改築)
建築設計図書
新築住宅性能評価書
住宅瑕疵担保保証保険書
建物状況調査の結果概要
耐震診断の記録
アスベスト使用の有無の調査記録
雨漏り検査記録
シロアリ検査記録
工作物確認通知書
工作物設計図書
井戸水の水質検査記録
リフォーム・修繕記録など
分譲時のパンフレット
管理規約
使用細則
総会議事録
決算報告書
新築住宅性能評価書
住宅瑕疵担保保証保険書
建物状況調査の結果概要
差押え予告通知書など
※すべての書類を必要とするわけではありません。

不動産情報告知書の例

契約不適合責任”免責”特約とは?

契約不適合免責特約とは「契約に適合しない事象があっても売主は責任を負わない」という特約です。

たとえば中古住宅等を売却する際、新品同様の品質が求められ、売主側にすべて責任を負わせることは現実的ではありません。

そこで、物件の現状について買主が把握し、引き渡し後に不具合や瑕疵等が発見されても、売主側は責任を負わないことを、買主が承諾を得た場合のみ「免責特約」をつけることができます。

民法はそもそも任意規定です。任意規定とは当事者が民法と違った内容の契約・特約をしても無効ではなく、法規定より優先されることを言います。

ですから「契約不適合責任を負いません」と明記しても有効なのです。ただし、買手側が承諾した場合に限り有効で、承諾しない場合は、そもそも売買契約が成立しません。

また、契約不適合免責”特約”をつけ、たとえ買手側が承諾した場合であっても、売主は買主に対して説明義務(責任)を免れるわけではありません

先述のとおり「購入希望者に重大な不利益を及ぼすおそれがあり、その契約締結の可否の判断に影響を及ぼすことが予想される事項」について「売主側が認識しており、説明しなかった場合」には、信義則上の説明義務に違反し、不法行為責任に問われます。

「それを知っていれば、買わなかった、その金額で購入しなかった」という情報を、売主側が認知していて買手に提供しなかった場合、契約不適合の免責ができたとしても、不法行為責任として損害賠償の対象になる可能性があり、20年間の時効により責任が加重される可能性が高まります。

たとえば「雨漏れやシロアリ」が発生している(していた)ことを知っていたのに買主に説明しなかった。隣接者が夜中に騒音を出すことを知っていたのに買主に説明していなかった等です。

それだけでなく、容易に調べたらわかるものについても同様です。なぜなら目的物の売買取引は、売手側は「買手に目的物を引き渡すために、できる限りの最大限の努力をするという根底で成り立っているからです。それらを無視することは、司法判断ではほぼ許されないのです。

「普通にしていたらわかる」「知らなかったワケがない」「少し調べたらわかる」という情報を伝えず、その情報が購入判断に影響を及ぼすものであった場合は「説明義務違反」として不法行為責任に問われる可能性があります。契約不適合責任の免責特約をつけたからと言って「何も説明しなくて良い」と言うわけではありません。

現実的に言えば、契約不適合を免責する特約は、多くの不動産売買取引でおこなわれています。ですが、これらを知らないまま、売主様にリスクを負わせて売却させてしまう不動産会社や営業マンも数多く存在しています。

ですが「説明責任の努力」という根底を無視した売買取引をおこない、もしトラブルになればアナタの責任は重くのしかかるでしょう。

また、仮に契約不適合免責特約を売買取引の条件にしても、買主側が承諾しない場合がありますし、買主がリスクを背負う分、購入判断を見送られてしまう可能性もあります。

買主側も高い買い物をするわけですか、リスクを負いたくないと感じるのは当然です。そのリスクを背負う分、値引き交渉もおこなわれ、売買代金が減額になったり、売却期間が伸びてしまう可能性も高くなるでしょう。

より高く・安全な不動産売却を

買手が不動産を購入する際に抱く不安・リスク、そしてトラブルになる要因は、先述した通り主に5つです。

感情面は別として「お金や時間に関すること」、「目的や計画が達成できないこと」、「健康や安全面にかかわること」など、これらのリスクになるような情報を、売主側でできる限り提供すれば、買手側はリスクを予測することができます。

リスクがわかれば、それはもはやリスクではなくなります。なぜなら対策を取ることができるからです。たとえば、そのリスクを改善するための費用はいくらか?どれだけの時間がかかるのか?を算出することができます。

トラブルの元凶は間違いなく「想定外」です。情報を積極的に提供することは、買手から信用を得るだけでなく、売主側にもさまざまなメリットが得られるものです。

買手側のメリット
  • 物件に対する無駄な憶測や不安を取り除くことができる
  • 物件の購入リスクや、物件を調べる労力を取り除くことができる
  • 情報が開示されているため、購入の資金計画がしやすくなるetc
売手側のメリット
  • 情報を提供することで、買手からの信頼を得ることができる
  • 他の物件との差別化に繋がる
  • 取引後のトラブルを回避することができる
  • 無駄な値引きをしなくて済む
  • より高く売却できる可能性が生まれるetc

言いたくない情報を提供したら価格を下がるのでは?」「売れなくなるのでは?」と思う方もいるでしょう。

ですが、そのような「言いたくない情報」は、買手が「買うか買わないか」の購入を判断すべき重要な情報であるケースがほとんどです。

その情報を伝えないまま売却すれば、後々大きなトラブルになり、大きな損失を被ることになります。それよりも正直に、かつ丁寧に情報を伝えることで、逆に買手から信頼を得て、円満な取引をおこなう方が結果的に高く売れるのです。

また、それらの情報は人によって捉え方がさまざまです。「それだったら買わなかった」という人もいれば「それなら想定内で許容範囲だ」と感じる人もいます。

だったら前者に売却するより、後者に売却した方が好条件で売却できることは言うまでもありません。問題は、そのような人に対しても情報を伝えないまま取引をおこなってしまうからトラブルになるのです。

不動産に完ぺきはありません。何かしらのリスクがあります(新築住宅でも8割は欠陥住宅だと言われているほどです)。そのリスクをしっかり相手に伝えないまま、何の問題もないように捉えられ、売買するからトラブルに発展するのです。

買主の説明責任はあくまで売主側にあり、宅建業者は履行補助者に過ぎません

売主は、不動産をしっかり買主に引き渡す義務のある「債務者」であり、宅建業者はその債務者の履行を補助する者という立場です。

宅建業者の責任は売主個人も負う」と判例でも示されていますので、不動産会社選びも慎重におこなう必要があるでしょう。

大阪高判平成16.12.2

売主が買主から直接説明することを求められ、かつ、その事項が購入希望者に重大な不利益をもたらす恐れがあり、その契約締結の可否の判断に影響を及ぼすことが予想される場合には、売主は、信義則上、当該事項につき事実に反する説明をすることが許されないことはもちろん、説明をしなかったり、買主を誤信させるような説明をすることは許されないというべきであり、当該事項について説明義務を負う。

東京地判平成9.1.28

売主は売買契約に向けて仲介業者に委託している以上、仲介業者を売主の履行補助者とみて、指導要綱の説明義務違反について売主も責任を負う。

また、説明責任だけでなく、理解を得やすい説明方法や態度や表情等にも気を配る必要があるでしょう。なぜなら人は感情的な生き物だからです。

ですから「素っ気ないな」「何言ってるかわからないな」「言い方がムカつくな」など、ネガティブな感情を抱かせないこともトラブルを避ける方法の1つです。

人のネガティブな感情が後々、大きなトラブルを誘発することもあり得るのです。これは売主だけでなく、不動産会社の担当者も特に気をつけなければなりません。

本来、取引というのは「価値と価値の交換」です。この根本に従うなら、売主が買主に提供すべきものは、不動産という目的物を通じた「価値」を提供しなければなりません。

買手は「お金という価値」を支払って不動産を取得します。ですが、買手は不動産を買うのではなく「不動産から得られる価値」を買います。たとえば、住宅を購入することで、安全や安心、家族との絆、将来への希望などを得たいという価値です。

これらの目的を達せられない場合、価値に値しないと評価され、トラブルの元になってしまうのです。

ですから、買手が不動産を購入する目的は何なのかを理解し、買手の願望実現に貢献するために、あなたの不動産がどれだけ役に立つかを示さなければなりません。その手段の1つが徹底した情報提供なのです

買手が理解し、納得し、承諾し、満足し、喜んで頂くこと。あなたの大切な不動産を買手に託し、買手の幸せや発展を願うのであれば、決して「不都合なことは言いたくない」とか「売ったら後は知らない」と言えないでしょう。

あなたの不動産を通じて、購入者がより繁栄・発展していく。その思いを提供することが、より良い取引につながるセンターピンだと信じています。

実に120年ぶりと言われている民法改正。時代の流れに沿った法改正がおこなわれた事によって、売り渡す側の責任は重くなり、買手の保護が強化されました。

そして、特に中古住宅(土地も含む)の売却が、今までのようには行かなくなった理由に、国土交通省による「住宅ストック維持・向上促進事業」も背景にあると考えられます。

これは「良質な住宅は評価され、良質な住宅は評価されるべきではない」との考えがあり、今後、浸透していくでしょう。

良質な住宅とは、適切な維持管理やリフォーム(耐震性や省エネ性、瑕疵がないことも含まれる)がなされている住宅を言います。

大切な不動産を売却されるわけですから「より高く売却したい」と思われるのは当然です。しかし、後々大きなトラブルとなってしまっては意味がありません。特に不動産は高額なので、賠償額も大きくなります。

中には法改正を詳しく理解することなく、売主様にリスクを負わせて取引をさせてしまう不動産会社も多々存在しています

まずは安全に不動産を売却すること。そのために的確なアドバイスやサポートをしてくれる不動産会社選びが何より重要です。

  • 宅建士の上位資格である「宅建マイスター(通称:上級宅建士)」によるサポートが受けられます。
※ご依頼者様のサポートに専念する都合上、サポート数を限定しております。予めご了承ください。

動画で理解されたい方はコチラ

YouTubeでは「契約不適合」について解説した動画が多く掲載されています。中には誤った情報が提供されている動画もありますので注意して下さい。以下の動画は一定の信頼性があると判断した情報を掲載しています。
但し、契約不適合責任は改正されたばかりの法律です。解説者によって見解が異なる場合や、情報が古い場合もありますのでご注意願います。

↑(7:31)数量に関して、契約不適合責任は問題ないと解説されていますが、公簿面積と実績面積の差が5%を超える場合は契約不適合になる可能性が指摘されはじめています。公簿売買(現在は代金固定売買と表現します)をおこなう際は実際の面積と5%超の差がないか注意が必要です。

契約不適合責任の内容・条項については、契約を取り交わす前に、買主様側と事前の協議・調整が必要です。ひな形を使用した一方的な条件提示は、後々トラブルに発展する可能性があります。

民法改正後、数年しか経過していない契約不適合責任について、深く理解していない不動産営業マンも多く存在しています。売却後のトラブルを避けるために、契約不適合責任について最新の情報を得ている担当者に依頼しましょう。

まとめ

サマリー
  • 2020年の民法改正により、売主側の責任が重くなり「売ったら終い」の時代ではなくなった。
  • たとえ中古であっても「売るからには一定の責任を負う時代」に。
  • 用途・数量・品質において、買主の購入目的や契約内容に適合しない契約は「契約不適合」として「債務不履行」責任を負う。
  • 契約内容と実際が相違する場合は、修補請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除などのリスクが高まる。
  • また売主側が既に知っていて(または容易に知り得ることについて)、買手の購入の判断に影響を及ぼす情報を提供しなかった場合は「不法行為」責任で時効が20年に。
  • 対策は、引き渡す不動産を契約内容を適合させること。そして、買主の購入判断に影響を及ぼす「想定外」を避けるため、売主側には綿密な調査と誠実な情報提供が求められる。
  • 契約不適合の免責特約を付けた不動産売買契約は可能。但し、売主としての説明責任は免れることはできない。
  • 安易な契約不適合の免責特約は、無意味な値引き交渉や売れない可能性が高まる。
  • より安全により高く不動産を売却するなら、これからは積極的な情報提供が必須。
  • 不動産にパーフェクトは存在しない。その中で、いかに売主のリスクを減らして最善の売却方法ができるか、不動産会社選びも重要。

エフティマ不動産では、より高く早く不動産を売却するためのサポートだけでなく、売主様に安心して不動産を売却して頂けるようサポートをおこなっております。

もし、自分や自分の家族、親友など大切な人が不動産を売却するとき、どうすればベストな不動産売却が実現できるか?この指針を基本としています。

不動産の売却を検討されている方は、一度ご相談ください。

  • 全国の宅建士の中でもわずか0.14%しか名乗れない「宅建マイスター(通称:上級宅建士)」が担当致します。
※ご依頼者様のサポートに専念する都合上、サポート数を限定しております。予めご了承ください。
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